触れるということの癒し
二人だけの夕食後 そう遅くはない時間
「片付けが済んだらトリートメントしてあげる」
「そうかい」と言ったのに待ちきれず、ベット入ってしまった母
昨夜はそのままハンドトリートメントをした
とろりとろりと眠りに入り、声かけにも答えなくなる
ひじ上までゆっくりと包み込んで手を動かしていく
今夜はそうだ、足をしてあげよう
布団から右脚を出し膝までパジャマをたくし上げる
ハンドバスをして温めた私の手
静かに、そしてしっかりと密着させて甲に置き、両手を滑らせはじめる
香りはあまりわからないと言う母は82才になる
自分のために選んだ今夜の香りは ラベンダーとマジョラム
気持ちいいよと言いながら、しばらくするとスースーと寝息が聞こえてくる
両脚が終わる頃、自分の気持ちが落ち着いて来た事に気がついた
さっきまで、この頃の母の理解力の衰えにイライラしていたのだ
ついトゲのある言葉が口をついていた
そんな時 母はさっさと部屋に籠ってしまう
トリートメントは母の部屋をノックする口実
これだけは断らずに受けてくれる
左脚も終わり布団を掛ける
その時気がついた
施術した私のイライラはすっかり消え、
気持ちはほっこりと温まっていることを…
香りに癒される心地よさ
静かに流れるBGM
オイルで摩擦なく滑る手
静かに大きく包み込む動き
トリートメントはこれほどまでに、施術する側へも大きな心の癒しを与えてくれるのか
その気づきに ただただ 嬉しかった